白き永遠

主にエロゲーの感想や考察について書いていきます。楽しいエロゲー作品に、何か恩返しのようなことがしたくてブログを始めました。

アストラエアの白き永遠 落葉ルート考察(10108字)

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これは「アストラエアの白き永遠」の落葉ルートの内容まとめです。

※以下ネタバレなので、プレイ済みを推奨します。















まず始めに、ひとは分かりあえると信じてという内容において、落葉ルートで描かれているテーマを一言で表すのなら『孤独』です。
そのことを意識した上で読んでもらえると分かりやすいと思います。

※画像の著作権は全て、有限会社FAVORITE様に帰属します。

























お父さんを、信じられない

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「お父さん、榛名くんを転校させてまで、なにがしたかったのかな......」
「言ったじゃないか。俺を、使用人としてよこしたって」
「それが本当だとしても、なんでこの時期なのかがわからない。もう何年も家をほったらかしにしてたくせに」

「そのことに反省した結果じゃないか?」
「急に、私たちのことが心配になったって?」
「ああ」
「......信じられないわ」


ーー落葉、陸(共通)


橘落葉は父のことを信じていませんでした。それは父が何年も家に帰っておらず、落葉たちのことを放置し続けた家庭環境に起因しています。

そのため父が心配していて、家に帰っていないのを反省しているということを考えられません。もう何年も経った今、落葉にとってその時間の長さは、信じることを無理にしていました。

落葉は父のことを信じていなくて、そして嫌ってさえいました。









橘落葉が父を嫌う理由

「お父さんはね、自分の研究に夢中で、これまで家庭を顧みなかった……」
「そのせいで、お母さんは苦労が絶えなかった」
「お父さんは、そんなお母さんを手伝いもしなかった……」
「榛名くんが私の家事を手伝おうとするのとは、逆にね」
「結果、お母さんの身体は弱っていった。葉月を産む体力もないくらいだった」
「だけどお母さんは、その命と引き替えに、葉月を産んでくれたのよ」

俺は、落葉が口を閉ざすのを待って言葉をかける。

「……だから落葉は、父親が嫌いなんだな」
「そう言っていいんでしょうね」


――落葉、陸(落葉√)


橘落葉はなぜ父のことを嫌うのでしょうか?それは家庭を顧みなかったからなのですが、その結果として葉月の命と引き替えに、母が弱っていき、命を落としてしまっています。

橘落葉にとって父とは、母を奪った張本人であり、そのうえ母が命を落とした後でさえ変わらず家庭のことを顧みなかったから、父のことを嫌っているということになりそうです。









父と一緒に暮らさない、もう一つの理由

「私は、これまでお父さんの誘いを断って、この月ヶ咲で暮らしていた……」
「お父さんは一緒に暮らそうって言ってるけど、それは月ヶ咲を離れるって意味でもある」
「私はどうしても、それを受け入れられなかった」
「月ヶ咲には、お母さんのぬくもりがあるから」
「お母さんの想い出があるから……」


――落葉(落葉√)


落葉が父とは離れて暮らす理由は父が嫌いで信じられないということの他に、母との想い出を手放したくなかったという理由もありました。

父を嫌っていることが大きい問題ではなくて、母との想い出を大切にしたいから、そんな想い出とぬくもりが寂しさをなくしてくれるから。その気持ちが父の誘いを断っていた理由です。

落葉は本心は父のことが嫌いという理由よりも、母との想い出の場所(=月ヵ咲)を離れるのが寂しいから、父と離れて暮らすことを決めていました。









怒りを超えた何かの感情

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「長い間この家を留守にして、苦労をかけてしまったね」
「…………」
「だからというわけじゃないが。おまえの顔を見て、驚いたよ」
「母さんに、似てきたね」

その瞬間。
怒りに耐えていたようだった落葉の顔色が、一変した。
そこに見えたのは、怒りを超えた何かの感情だった。

「ずっと……誰も、お母さんを助けなかった……」
「私は、お母さんを助けることができなくて……」
「お父さんは、お母さんを助けようともしなかった……」
「…………」
「お父さんは、お母さんが苦しんでるときも、家に帰ってこなかった……」
「葉月の出産のときでさえ、お父さんはいなかった……」
「お母さんのそばにいなかったのよっ……」

「そんなお父さんに、どうやったら私たちは、ついていけるって言うのよっ……」

ぽろぽろと、落葉の瞳からこぼれ落ちるものがある。
彼女の涙は、初めて見た。


――大樹、落葉(落葉√)


ここで橘落葉が父に対して怒鳴ったのはどうしてでしょうか?

橘落葉が父を嫌う理由は、父が家事を手伝わず、母や落葉たちの苦労が絶えなかったからでした。ここでの橘落葉は、父が家に帰ってきたところです。父は苦労をかけたことを落葉に伝えています。それなら怒鳴る必要はなく、和解できるように思えます。
しかし実は、これはその前提が間違っています。そしてそのことに、落葉自身でさえ気づいていなかったからです。

ここで落葉が怒鳴ったときに父に対して、家に帰って来なかったこと、家にいなかったこと、そして「お母さんのそばにいなかった」ことを責めています。

つまり、橘落葉が欲しかった言葉は、家事を手伝わなかったことや、苦労をかけたことなど、そういう言葉が欲しかったのではありませんでした。ただそばにいてほしかったのです。

だからここで落葉が父から欲しかった言葉は、「そばにいられなくて、寂しい思いをさせて、ごめんなさい」という言葉が近いのだと思います。

ここでの落葉の感情が怒りを超えた何かであったのは、今まで家に帰ってこなかったこと、母を奪った怒りだけではなく、母がいない寂しさ、父がそばにいてくれない寂しさと悲しさ、様々な感情があったからでしょう。

ここでの落葉の感情は、怒りの裏にあった本当の気持ちである、寂しさが混じり合って爆発した何かということになります。









そばにいてくれるだけで、充分

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「榛名くん、少し勘違いしてるから……。家事を手伝うことで、私の助けになるって考えてるみたいだけど」
「私が望んでるのは、そうじゃない……」

「一人で家事をするのは、たしかに大変なところもあるけど……。だけど、それだけが問題じゃないの」
「お母さんも、たぶんそうだったんだと思う……」
「お母さんが一番望んでいたのは、お父さんがそばにいてくれることだったと思うから……」
「だから、榛名くんも同じなのよ……」
「ただ、そばにいてくれるだけで充分なのよ……」


――落葉(落葉√)


落葉は父に対して叫んだ言葉から、そばにいてくれるだけで充分だという自分の本当の気持ちに気づきます。父が家事の手伝いをしてくれないことは本当の問題ではなく、ただそばにいてくれることが大切でした。

落葉が父を嫌う理由も同じで、そばにいてほしいという落葉の気持ち、そして母の気持ちにも応えてこなかったからです。
家事を手伝わず、苦労をかけたことはその前提が間違っていて、落葉にとって本当の問題ではありませんでした。









独りは耐えられない

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「葉月……お願い……」
「目を覚まして……」
「悩みがあるなら……教えてほしい……」
「葉月の力になってあげたいの……」

……いや。
そんなのは建前だった。

悩みなんて、二の次だ。
もしも葉月がこのまま回復しなかったら?
母と同じく、自分の前からいなくなってしまったら?

そうなれば、落葉は独りになってしまう。
怖い。ひどく怯える。
独りなんて、耐えられない。
家族が誰もいなくなるなんて、きっと私は耐えられない。

「耐えられるわけ……ないじゃない……」


ーー落葉(落葉√)


落葉が誰かにそばにいてくれることを望む理由は、独りになることを恐れていて、そして耐えられないからです。

父は家庭を顧みず母はいなくなってしまったことで、両親は今までそばにいませんでした。だから落葉は孤独を恐れていました。

そして葉月までいなくなったら、落葉は本当に独りになってしまいます。葉月だけが家族と呼べるような、ずっとそばにいてくれた存在だったことからも、落葉にとってそばにいることの重大さが分かります。

葉月のそばにいて看病するのも、心配だからという理由よりも、独りになりたくないからそばにいる。これが独りになることを恐れた、落葉の本音です。









独りにするものは大嫌い

母の死を超える絶望感。
それをもたらすのがルーンなんてわけのわからないものだというなら、落葉はそれを嫌悪する。
エルフィンという存在を、敵視する。
お父さんもエルフィンも、大嫌いだ……。

「それだけじゃない......」
「こんなふうに思う自分も、大嫌い......」


ーー落葉(落葉√)


落葉には父はそばにいてくれず、母は奪われ、孤独を感じてきていました。そして今度は能力が、ただ一人そばにいてくれた葉月まで奪おうとします。

だからルーンが大嫌いで、ルーンを持つエルフィンだって大嫌い。
ルーンとエルフィンの研究に関わり、ずっと家に帰って来ないで落葉を独りにさせた父のこと、そんな何もかも全てが大嫌いだと落葉は感じていました。

しかしそれだけではなく、落葉は父や何もかもを嫌う自分のことを、何よりも嫌いだというもう一つの本心がありました。それは落葉が何も嫌っていなかったのに、嫌いだと思い込んでいたからです。









嫌いになれなかった

落葉はいつからか、陸の名前を繰り返し呼んでいた。
おかしいな……。
榛名くんだって、エルフィンなのにな……。
私が嫌いだって思った相手なのにな……。

「そうよね、葉月もエルフィンなんだから……」
「嫌いになれるわけ、ない……」
「榛名くんだって、嫌いになれるわけ、ない……」
「私たち……家族なんだから……」
「最初から、嫌いになれるわけ、なかったの……」

だから、きっと。
お父さんだって、嫌いになれるわけがない。


――落葉(落葉√)


落葉は、エルフィンやルーンを通して、本当は父のことも嫌っていたわけではないことを知ります。

エルフィンの陸のことは嫌いではなくて、いつの間にかそばにいてほしい相手になっていました。葉月も同じくエルフィンでしたが、最初からそばにいてくれた家族でした。

そこからエルフィンと関わっていた父のことでさえ、本当は嫌いではなかったことに気づきます。そばにいてくれなくても、家族なら繋がりがあることに気づいたから、父を嫌っていたわけではないことに気付いたのでした。









ぬくもりはそばにあった

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橘落葉は今、一面の銀世界に放り出されたような心地だった。
ここは一体どこだろう。
天井がどっちにあるかわからない。自分は立っているかどうかもわからない。

怖かった。
孤独というものを理解した。

まるで迷子になったかのようで、誰かを探して必死に手を伸ばしていた。
その手は、すぐに触れた。
なにかに触れた。

落葉はまた、理解した。
私は、孤独じゃない……。
見えないだけで、ぬくもりはそばにあったのだと。

――落葉の共感能力(落葉√)

落葉が本当に嫌い、そして恐れていたのは孤独になることです。ずっと誰かがそばにいて欲しいと願っていましたが、それは自分が孤独になることが怖かったからです。

孤独とは迷子のような状態だと言われています。自分がどこに居るのか分からない、そんな迷子の状態である孤独が怖がっていました。

しかし落葉は孤独の中で、本当は孤独ではなかったことを理解しています。それは心だけで通じ合えたから、言葉にできていなかっただけでずっと手を伸ばし続けてきた父がいたことを知ったからです。

落葉はここで、そんな心からのつながりがあったことを理解していました。









独りになるのが恐かった

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落葉は、父に謝ることができた。
今まで言いたくても口にできない言葉を作れた。
その勇気はきっと、そばにいる彼からもらったものだった。

だって、わかるんだ。
自分は一人じゃないってわかるんだ。
だから落葉は、やっと素直になることができたのだ。

「これまで....ごめんなさい......」
「お父さんばかり責めてしまって......」
「訪ねてきても、追い返して......」
「声をかけても、聞かなくて......」
「話しあう機会すら作らなくて......」

「私……怖かったのかもしれない……」
「自分に、ウソばかりついて……逃げてばかりいて……」

「本当は、そうじゃなくて……」
「私は……葉月が独りになることだけじゃない……自分が独りになることも恐れてた……」
「私……お父さんに葉月を取られるのが、怖かった……」

「お母さんがいなくなって……お父さんもいなくなって……」
「それで、葉月までいなくなったら……」
「私は、ひとりぼっちになるから……」

「私は、恐れるだけで、誰のことも信じてなかった……」
「だから、誰にも頼れなかった……」
「独りで強がってばかりいた……」
「独りで怯えてばかりいた……」

「おまえは、独りじゃない」
「いつだって、独りじゃなかったんだ」
「それをおまえに伝えられなかった私が、一番の大バカだ......」


ーー落葉、大樹(落葉√)

落葉は父に対して本当の思いを伝えますが、それこそ落葉を孤独にしてきた人たちを信じられず、また孤独にされてしまうことを恐れていたことでした。

落葉は父のことを嫌っていたのではなく、また独りにされることを恐れてしまい、信じることができずに独りで怯えていました。恐れや怯えへの自分の弱さを素直に認めることができなくて、嫌いだと思い込んでしまっていたのです。









勇気を出して、最初の、一歩

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「葉月は、うらやましいくらい素直なんだから……」
「きっとお母さんに似たのでしょうね」
「お母さんは一途で、強かったから」
「お父さんのこと、最後まで信じていられたくらいに……」
「自分の気持ちに正直になれるって、すごいことだと思う」

――落葉(落葉√)

 
 

……最初の、一歩。
それは、いつか彼からもらった言葉のひとかけら。

「じゃ、がんばれ。最初の一歩さえ我慢すれば、気がついたら終わってるさ」
「怖いとか、そう思う前にさ」

彼だけじゃない。
私は、葉月からも背中を押してもらったんだから。

「最初の一歩……」
「勇気を出して……最初の一歩……」

同じだ。
最初の一歩をがんばれば、楽しい時間を作れるんだ。
私はもう、それを知っているはずだ。
だったらもう、恐れるな。
逃げないで。
勇気をもって。

「ずっと、そばにいてほしい……」
「あなたにそばにいてほしい……」
「そうやって、二人で肩を並べて歩きたい……」
「あなたと一緒に、葉月の手を握りながら……」

「きっと、私が我慢していたから、葉月も我慢することになってしまった……」
「もう、そんなのはやめにするわ」
「勇気を出して最初の一歩を進めば、楽しい時間が待っている。今はそれを信じていたいから」


――落葉(落葉√)

ーー最初の、一歩。

それは相手を信じること、そして自分の気持ちに素直になることでした。

孤独を恐れていた落葉は、一緒にいてくれる人を信じることができなくなっていて、そして強がっていたことで自分の本心を見失っていました。だからこそより一層孤独を感じることになっていました。

そんな落葉にとって必要だったものこそ、恐れず勇気を持って、最初の一歩を踏み出すことでした。それが孤独と向き合った、落葉の出した答えです。

最初の一歩を踏み出した先に、楽しい時間があることを信じて。落葉はまっすぐに進んでいく決意をします。









これからの想い出

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「葉月……覚えておいて……」
「あなたは、一人じゃないってこと……」
「みんなで助け合えるってこと……」
「みんなで支え合うのが、家族なんだから……」

「それを、忘れないでね……」

「お母さんの分まで、家族の想い出を作ってね……」

――落葉と葉月の共感能力(落葉√)

「それが、お母さんがあなたに残すことができた、最初で最後の想い出だったのよ……」
「本当は、もっと思い出を残したかったと思う……」

「だからね、葉月……」
「これからは、想い出、みんなで作ろうね」
「三人で一緒に、作っていこうね……」

「お姉……ちゃん……」
「葉月のそばに……いてくれるの……?」
「うん、当たり前じゃない」
「お兄ちゃんは……」
「聞くまでもないだろ。俺は、落葉と葉月のそばにいる」

これからは、三人で創っていくのだから。
家族の想い出を。

これが、三人で共に創った、最初の一歩。
未来へとつながる、俺たちの新たな想い出――――


ーー落葉(落葉√Fin)

最初の一歩を踏み出した先にある楽しい時間、それはやがて想い出となっていきます。

孤独を恐れるだけだった落葉は、一緒にいることで積み重ねた先になる、想い出を作りたいという新しい一歩を踏み出していくのでしょう。














・気になったところ


局長について

「私を忘れ、落葉が悲しまなければ、葉月の心も癒えるだろう。私にできることがあるとすれば、それだけだ」
「私は、もう二度と落葉には合わない」
「葉月とも会わない」
「娘たちを想うことは、しないだろう」
「私はそれが最善だと考えた」

「あんた……それでいいのか」
「やり方ならほかにもあるだろ。あんたが父親らしく振る舞えばいいって話だろ」
「娘たちが悲しんでるなら、喜ばせればいいってだけの話だろ……」
「…………」
「なのになんで、あんたはそう、逃げ腰なんだよ……」

「……生意気を言うな」
「私はずっと、家族と離れて暮らしてきた。今さらどう父親面をすればいいのかなど、わかるわけがない」


――大樹、陸(落葉√)

 
 

「局長は、不器用ですから。素直じゃないんです」
「だから娘たちを喜ばせるどころか、謝ることすらできないんだと思います」


――りんね(落葉√)

書ききれなかった局長(=落葉の父親)について書かれている部分です。大雑把には局長が不器用だということが言われています。

局長の目線で見ると、落葉をほったらかしていたというよりも、どう接していいか分からなくなっていたとなるのだと思います。





落葉も不器用で素直じゃないから

そうだ。お父さんは、謝った。
じゃあ私は、お父さんに謝ったことがあっただろうか。
私も、不器用だから......。
素直じゃないから......。
そういうところ、お父さんに似たんだろうな......。


ーー落葉(落葉√)

局長が不器用だと言われていたように、落葉ちゃんも不器用なところが似ているみたいです。ここは親子としての共通点を表したかったのかなと。

局長と落葉ちゃんですが、お互いに似た者同士であり、同じ悩みを抱えていました。
そしてその二人は疎遠になりながらもお互いのことを考えていたことは、目に見えないつながりであったのかなと思いました。





頼るということ

「......俺が家族にこだわってるとしたら、理由は一つしか思い浮かばないな」
「俺は、孤児なんだ。だからたぶん、家族というものに飢えていた」
「大した理由じゃないんだ。それだけの話だ」
「これまで隠してきたのは、同情されたくなかったからだ」
「要するに周囲から浮きたくなかった。そういうのにうんざりしてるんだ、俺は」
「能力者になったせいで、孤児が集まった施設の中でさえ浮いてしまっていたからな」

俺は、気がつけば早口になっている。
恐れのせいだろうか。俺は、落葉にだけは同情されたくなかった。そんな関係にはなりたくなかった。
なのに話してしまった理由は、一つしかなかった。

俺は、理解して欲しかった。
俺を知って欲しかった。
俺という人間を見て欲しかった。
行くあてがなく、迷子になって、だけどそんな俺を見つけてくれる誰かを望んでいた。
いつだって、帰る場所を探していたんだ。


ーー陸、落葉(落葉√)

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「だから私も、こうやって、あなたを守ってあげたくなる......」
「守られるだけじゃ、嫌なのよ......」
「もっと頼って欲しいのよ......」

俺は知った。
これが、頼るということだった。

俺は落葉を頼っていると思っていたけれど。
いつも食事を用意してもらってる。弁当だって作ってもらってる。
この家に住まわせてもらってる。
そんなのは、上辺だけだ。

やっと、知ることができた。
無防備に泣いて。
自分というものを見せて。
俺という本質を受け入れ、肯定してくれる。
彼女は、俺の全てを肯定してくれる......。


ーー落葉、陸(落葉√)

あのお悩みだけ見ると落葉ちゃんの魅力が分かりにくいと感じたので、魅力だと思ったものから一つだけ紹介したいです。

ここは主人公が、悩みを落葉ちゃんにだけ素直に打ち明ける場面です。
(こうして見ると家族にこだわっているのは、実は落葉ちゃんたちだけではなく主人公も強くこだわりがあったのかなと思ったり)

誰かに頼るとは家事をしてもらったり、ただ身の回りのことをしてもらうことではなく。自分の心を許し、心から寄り添い合えることでした。
主人公のことを全て受け止めてくれる、そんな優しさも含めて落葉ちゃんは魅力的な女の子だなと思いました。