白き永遠

主にエロゲーの感想や考察について書いていきます。楽しいエロゲー作品に、何か恩返しのようなことがしたくてブログを始めました。

さくらの雲*スカアレットの恋 遠子編感想(4504字)

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ウインクする遠子ちゃんかわいい......。


※以下からはネタバレですので、プレイ済みを推奨します。

※画像の著作権は全て、きゃべつそふと様に帰属します。
















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怪盗ヘイスト。二年前から帝都に現れ、その犯行で盗み出す品には基準がないように見えていたが、その背後には浅見蘭花という蒐集家の存在が関係していました。浅見蘭花は遠子の母であり、五年前に事故により亡くなっています。その事故の場に居合わせていたのが、怪盗ヘイストの正体であったリーメイと、そしてその怪盗を裏で操っていた不知出遠子でした。遠子はリーメイに、死んだ母への償いとして収集品を取り返すことを命じます。浅見蘭花が亡くなったことのしがらみからこの事件は生まれていました。

そして遠子が課した償いは、殺された方がマシだとリーメイが言っていたように、人生の全ての時間を費やしても終わるのか分からないものでした。

生かさず殺さず、それが彼女が誓った復讐。遠子は、母から盗んだものを奪い返すことをリーメイへの復讐としたのでした。


しかしリーメイに収集品を取り返すように命じたのは、ただ遠子が復讐心からそうしただけではなかったのだろう。


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遠子は盗みをすることも、そして盗みを直接指示していたことも悪であることを知っていました。しかし遠子が行っていたことは、そんなにも悪いことなのだろうか。

正当に対価を支払おうとしたところで、或いは真っ当に生きたところで、遠子が奪われたものは取り戻すことができないのだから。せめて母の蒐集品を取り戻したいと願うことは、そんなにも悪いことなのだろうか。それを願うことは許されないのだろうか。

遠子がリーメイに母が好きだった小説に扮して盗みを命じたのも、盗まれたバイオリンから気を逸らすための架空の依頼に、他のどの依頼よりも大金をはたいていたのも、そうまでして手に入れたかったからなのでしょう。

遠子はリーメイに怪盗として償わせ、母の死に報いようとすることで、母の死に対する理由が欲しかったーーそうすることで失った母を身近に感じていたかったのでしょう。

遠子は怖かったのだ。母の死が無意味であるということが。何もかもが無意味で、母との想い出も、一緒に過ごした時間も、もうどこにもないのだと諦めることを恐れていたのかもしれない。


しかし、遠子は母とリーメイの関係を誤解していました。母の死はリーメイを生かすために庇ったからであり、蒐集品も奪われていたのではなく、リーメイを助けるために母が譲っていたものでした。

母の死に理由はなく、どうしようもないことでした。ならばその死は、無意味だったのでしょうか。









大切なことは心の中に

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司は遠子と動物園に行った思い出を残すために、カメラを持ってくればよかった、そして未来では色付きの写真を残すこともできるのにと後悔する。

しかしそれに対して遠子は、心に残した思い出は決して色褪せないのだと言います。それが遠子にとって一番大事なことでした。誰かといた想い出も、時間も、心の中で決して色褪せることはない。

遠子はかけがえのない相手の隣にいることで、色褪せない想い出があることに気づいたのでした。


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遠子が司と一緒にいたのは、怪盗の存在を隠蔽して欺くためでした。しかしそんな関係でありながら、動物園に一緒に行ったときの遠子は、久しぶり(・・・・)に楽しいと言っていた。

遠子は司と一緒にいて、時々憂鬱そうな表情を見せることがありました。失ったものを追い続けて、忘れられなくて縋り続けていた日々に、遠子はどこか空虚さを覚えていたのでしょう。母を亡くした日からずっとそうだったことは、この「久しぶりに」楽しいという遠子の言葉が対照的に表しているように思います。


大切だった時間はどこに行ってしまったのだろう。

遠子が司に課した依頼は、遠子が用意していた指輪によっていつでも終わらせることができました。しかし嘘の依頼でありながら、遠子はそれを終わらせたくはないと思っていました。なぜならそれが遠子にとって一緒にいられたことは、嘘偽りなく楽しいと思えた瞬間だったからでした。そしてその眩しいくらいに楽しかった時間は、司には心から離れることはなくて、そして遠子は確かに心にあり続けるのだと信じていた。

母との想い出や一緒にいた時間を求めて蒐集品を集めていた遠子でしたが、大切なことはそうではありませんでした。

そして生前の母・浅見蘭花が全ての収集品を手放してでも助けようとしたリーメイの命。それはきっと、唯一母が残そうとしていたものであったと言えるでしょう。

自身のこれまでの行いを後悔したのかもしれない。生かしてくれた母の想いに反して、死のうとしていたリーメイの行動に気づいたからなのかもしれない。そして母が本当に大切にしていたものに気づいたからなのかもしれない。このときの遠子には色々な考えがあったのでしょう

命を貸し付けた賭けを結んでいたリーメイに、遠子は賭けの失効を言い渡した。


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後語り

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私が遠子ちゃんの話で感じた内容はこんな感じでした。ですがとりあえず遠子ちゃんがかわいい……。このCGが私はお気に入りです。私こういうの大好きなのでプレイしているときすごくドキドキしてときめいてしまいました。ここで色々な反応を見せてくれる遠子ちゃんがかわいすぎでした。


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そして母を喪い、母への想いだけが取り残されて。自らの手で取り戻せた蒐集品の仮面と、そしてその仮面をつけた怪盗に蒐集品を取り戻させる。母の蒐集品を取り戻すために、怪盗に蒐集品を盗ませるために、それだけの目的を果たしたくて、司とは中身のない一緒の時間をただ過ごしていたように思います。

それなのに、そんな時間がいつの間にか楽しいと思ってしまう。その板挟みに悩む遠子ちゃんと、その中での恋のお話が特に大好きでした。こう切ない恋には胸のドキドキが止まらないですよね〜。

そんな中での、遠子ちゃんの「楽しい」というただ一言が、私の中では心に残っています。司と一緒にいられることが本当に楽しそうな遠子ちゃんは良いですね


あとは気になったところをいくつか書いておきます。




盗まれたものを取り返したいと思うのは、当然じゃありませんか?

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盗まれたものを取り返すのは当然ではないか、こう問われた遠子ちゃんは凄く動揺していました。最初にプレイしたときには気づきませんでしたが、ここ遠子ちゃんが怪盗に関係していたことの伏線であったのだなあと後で気がつきました。

自分の罪を司に明かされたとき、遠子ちゃんは、奪われたものを取り返したいと願ってしまうのは仕方ないことではないのかと叫んでいました。それだけの想いを長い間抱えてきた遠子ちゃんには、深く刺さる言葉だったのかもしれません。




目に見えない真実

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母の命は失われ、蒐集品は奪われた。せめて残っている蒐集品だけでも取り戻そうとしていたのは、遠子が母を想い続ける気持ちからでしょう。誰かを想う気持ちや、忘れられない気持ちは、決して悪いことだとは言い切れないのかもしれません。だがそれは、そこにあるべきものを見ていなかった。


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リーメイが浅見蘭花によって救われていたように。そして浅見蘭花が望んでリーメイを助け、そして自分の命を犠牲に助けたように、リーメイを気にかけていた。そしてリーメイもまた、死んでしまった彼女にもう会えないことを後悔していました。

確かにリーメイが浅見蘭花に出会った目的は、最初は収集品を盗むつもりだったことは間違いありませんでした。そして最後の蒐集品であった時計を除いて蒐集品を奪い、そして売っていたことは事実でした。しかしそこにあったはずの、人の≪心≫や≪感情≫、そして≪想い≫を見ようとしていなかったのだ。それが遠子ちゃんの過ちだったのでしょう。




相手が竜でも虎でも...

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動物園で虎に威嚇で対抗しようとする遠子ちゃん。とてもお茶目でかわいいですね。しかしここでの言葉は、遠子の信念でもあったのでしょう。



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母を失っている遠子ですが、それに対し何かを失うまいとするときの遠子ちゃんの信念は強い。賭博場に乗り込んだ時も、大人たちの間に割り込んだ時も、決まって遠子は「たとえ相手が竜でも虎でも、退かないと心に決めている」と言っていました。

相手が竜や虎のようにどれだけ強大であっても、遠子にとっては失うことの方がもっと大きいのだろう。だからこそ、誰かの想いや生きることを奪われるのなら、大切なものを身を挺し全力で守り抜く。この言葉にはそんな遠子ちゃんの強い決意が感じられます。

このメリッサと遠子ちゃんいいですよね。これだけの強い想いが人を救うとは限りませんが、それでも誰かは救われることがありますね。誰かを助けて守るために、ただまっすぐに突き進んでいく姿には、憧れさえ抱いてしまいます。こうした遠子ちゃんの優しさと勇気には胸を打たれました。かっこいいです。

最後に私が最も好きな遠子ちゃんの言葉で終わろうと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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